日経平均株価は現在中東の情勢で不安定とはいえ、今後も上昇傾向です。
しかし、国民(消費者)は、「景気が良くない」と感じています。
この企業と消費者のズレは、いったい何処から来ているのか?
景気は、本当に良くないのか?
このことをデータをもとに、解説をされているのが本書『株高不況』です。

株高不況/藤代宏一 著/青春出版社
まず、日本企業の景況感を示す経済指標はすこぶる良好な水準にあります。
製造業にやや停滞感はあるものの、非製造業で景気の良さが目立つのは、いわゆるDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関連した業種(情報通信、事業所サービス)やインバウンド関連(宿泊・飲食、対個人サービス)、そして、建設と不動産です。
こうした良好な景況感は、大企業のみならず中堅、中小企業を含んだ全体ベースでも大きな違いはありません。
「中小企業は余裕がない」「人手不足が深刻で倒産が増加している」という情報が多いものの、日銀短観の回答者である企業自らが「良い」と回答しているのですから、これは想像とは違うかもしれませんが、事実として認識しておく必要があります。
つまり、消費者が抱く「景気が良くない」という感覚は、企業のそれと違っているということです。
そうだったんだ。ニャオ
日経平均株価を構成する225社には、半導体関連企業が数多く含まれています。
半導体はスマホ、PCはもちろん、自動車や産業機器に多く搭載されている他、近年はAIの飛躍的発展に伴いデータセンター向けの需要が増しています。
また、半導体と同様にコンデンサ、水晶振動子、インダクタ、抵抗器、コネクタといった電子部品メーカーの存在も株価を考える上で重要です。
日経平均株価が上昇しているのは、これらの企業の景気が良いからであり、名目GDP(価格×数量)と実質GDP(数量)を比較してみると、現在の4万~5万円の水準は決してバブルではないと、藤代氏は解説しています。
またここ数年の円安をきっかけとした値上げラッシュによるインフレは、逆に各企業に利益増大をもたらしました。今までは値上げをすると買い控えが起こるという不安があって出来なかったものが、各社一斉に値上げをすることになったからです。
では、そうして稼いだ利益を、企業はどこへ振り分けてきたのでしょうか?
端的にいえば、海外と株主です。
まず目を引くのは、投資有価証券です。
2010年に224兆円だったものが、2024年度末で428兆円とほぼ倍増しています。
輸出競争力が低下したことに加え、人口減少が意識され、縮小が懸念される国内市場に見切りをつけ、成長の源泉を海外現地生産型にビジネスモデルを切り替える動きが相次いでいます。
同じく著しい増加をしているのは、配当です。配当と自社株買いは急増しています。
2015年に5兆円程度だったものが、2019年には8兆円、2024年は18兆円と跳ね上がっています。利益剰余金、いわゆる悪名高い内部留保です。

※ 散歩で出会った雲間草です。……可愛いので思わず連れて帰りました。
円安要因については、さまざまな原因がありますが、国際競争力の低下を反映した面は否めません。
そもそも2010年までは、日本は一貫した貿易黒字国でした。
しかし、東日本大震災後、エネルギー輸入の増加により、日本は貿易赤字体質の国になりました。製造業が輸出型から海外現地生産型に切り替わったことや、デジタル分野における米企業の覇権的状況が対外収支をさらに悪化させています。
デジタル赤字とは、具体的には有料動画や音楽配信といったサブスク系のサービス、クラウド、オンライン会議ツールなどがあります。またSNSや検索における広告収入もデジタル分野に計上されます。その支払先は、米企業に移っています。
SNSや動画投稿サイトは、ユーザーは無料で楽しめる反面、その裏には日本企業の支出があるため、全体としては日本が対価を払っている構図になります。
米企業は公益事業やボランティアで運営しているわけではありません。便利なものに対価が発生するのは当然のことです。
そうしたサービスは積極的に活用すべきですが、
DXを駆使した生産改善に取り組むほどデジタル赤字が増えるという皮肉な構図ですが、人手不足を乗り越え持続的な経済成長を遂げるためには、背に腹は代えられないという現実があります。
いずれにせよ、デジタル分野では米国企業の勝者総取り状態となっています。
ただこれらを国産化できなかったことについては、2000年代後半のいわゆる失われた30年の不況時に、優秀なエンジニアが数多く外資系に流出し、先端モデルの開発が遅れたことなども影響しているようです。
日本はエネルギーとデジタルという「双子の赤字」を抱えているため、外国為替市場では円安圧力が生じているのは否めません。
今回のインフレによって企業は潤いましたが、労働者は約30年ぶりの賃上げ率にもかかわらず、賃金上昇は十分でなく、生活が豊かになったという実感が乏しいと多くの人が感じています。
それは賃金上昇が物価上昇に追いついていないからに他なりません。
名目賃金上昇率から物価上昇率を差し引いた実質賃金は、2022年以降、大半の期間がマイナス圏での推移となっています。
食料のみならず、幅広い品目の価格上昇が家計を圧迫しているのは説明するまでもないでしょう。特に低所得者にインフレのしわ寄せがきてたいへん苦しいものとなっています。逆に株式を保有している富裕層はインフレの恩恵を受けて、より豊かになっている状況です。
まとめると、「株高不況」というべき状況は、
企業が稼いでも、その恩恵が株価上昇と配当の受け取りという形で株主に偏り、労働者への還元が後回しにされたことがまず主因としてあって、そこへインフレが襲来したことで、株高と生活実感の悪化が併存したということになります。

この構図は今後も続くものと思われると、著者の藤代氏は語っています。
それに対して、われわれが出来る対策としては、
「インフレに強い資産の代表格は株式です。企業が労働者よりも株主への配当を先にするのであれば、われわれも株を保有するのが対抗策となります」
と語っています。
問題は、日本の家計の金融資産における株式の保有割合が欧米と比べて低いことです。
換言すれば、インフレに脆弱だということです。
家計が保有する株式比率は、2024年3月現在、株式が14.2%、投資信託が5.4%で約2割です。これに対し、米国が株式が40.5%、投資信託が12.8%で約5割、ユーロ圏が約3割です。
これには今までの日本では、学校教育で経済を教えて来なかったこともあるのかなと思います。筑波高校の方では、株の学習を始めたというニュースを、最近訊いたことがあります。
やはり今後は、何でも政府任せではなく、自らの経済は自ら学んで守るという姿勢が大切になってくるのかなと思うようになりました。

株高不況 (青春新書インテリジェンス) [ 藤代宏一 ]
いつもありがとうございます
ワタシは10年位前から、投資信託を始めましたよ。ほったらかし投資ですが、これは手堅く長期で運用すると、ほとんどの人が勝てるのではないのかな。
こんにちは。それはいいね

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