ムーミンたちは冬の間は冬眠をするのですが、どうしたわけかムーミントロールだけ、ふと眠りからさめたまま、それっきり眠れなくなってしまいます。
パパもママもどうしても目覚めないし、雪にうずもれた家の中はひっそりとして、寂しくてしかたがありません。
そこで親友のスナフスキンが残していった手紙を何度も読み返します。
” やあ。
よく眠って、元気をなくさないこと。
あたたかい春になったら、その最初の日に、ぼくはまたやってくるよ。
ぼくが来ないうちは、ダム作りをはじめないでね。
スナフスキン ”
ー 本書 ムーミン谷の冬 より ー

ムーミン谷の冬〔新版〕/トーベ・ヤンソン・作/講談社文庫
寂しくなってムーミントロールは、スナフスキンに会いに行こうとしますが、外は雪がたくさん積もっていて、まるで知らない世界のようでした。初めて見る雪も冬も、ムーミントロールは大嫌いでした。
( 死んでしまったんだ。ぼくが眠っている間に、なにもかも死んでしまったんだ。この世界はきっと、ぼくの知らない、だれかほかのやつに占領されちゃったんだろうな。……)
そんなふうに考えます。
作者のトーベ・ヤンソンさんが戦時中に、自分を癒すためにムーミントロールの話を書いたことを思うと、この言葉にも重みがありますね。
そんな寂しい冬でも、子りすやちびのミイ、トゥーティッキなど、夏とは違う出会いや生活があるのでした。
トゥーティッキやとんがりねずみたちは、ムーミン家の水あび小屋にちゃっかりとわが家のように住んでいるのです。そこでは夏とは違う冬の生活があって、物事の二面性をかいま見せてくれます。
冬の物語に出てくるキャラも、とってもかわいくて魅力的です。
はずかしがりやで姿が見えないとんがりねずみ、自分のことを強いオオカミの仲間だと思っている気の弱い犬のめそめそ、スキーが得意で気がいいのですが、陽気過ぎて冬のみんなからは迷惑がられているヘムレンさん、そんなヘムレンさんが好きなサロメちゃん……などなど個性的な面々です。
それだけではありません。モランや氷姫、薄気味悪いやつらなど、ムーミントロールが大きらいな者もたくさん出てきて……いろいろなことが起こります。
ムーミントロールは、うろうろしながら自分なりにいろいろと行動して考えます。
たとえば、ヘムレンさんを追い払おうとトゥーティッキにそそのかされて、ムーミントロールは「『おさびし山』には、スキーにいい斜面がある」と言います。
でも、すぐに心にも無いことを言ったことが恥ずかしくなって、
「崖で切り立っていて、雪もつもっていません。ぼくのまちがいでした。今、思い出したんですけど、あそこは、ぜんぜんスキーに向いてないんです!」
って言いなおします。
そのことでムーミントロールはうろたえてしまって、まっすぐ家に帰れずに、海岸へ出て水あび小屋へと大きくまわり道をします。すると、ゆっくりと雪がふりはじめます。
ひとひら、またひとひらと、あたたかい鼻の上につぎつぎと雪がのっかっては、とけていきます。ムーミントロールは、雪を手でつかまえて、ほんの少しの間、うっとりと見とれました。
それから空を見上げて、数えきれないほどたくさん、羽毛よりも軽くてやわらかく、ふわりふわりと落ちてくる雪をながめていました。
この時、ムーミントロールは夏と同じように、冬も好きになれそうに思ったのでした。
それはヘムレンさんにウソをいったことを、正直に話したことによって、心が軽くなったからかもしれませんね。
その後もいろいろありますが、1つ1つのエピソードが、まるで寓話のように語られています。
オオカミに憧れていて、いつも遠吠えをしていた気が弱い犬のめそめそが、本当にオオカミに出会ったときのこととか、ムーミントロールのお母さんが目覚めるエピソードとか、作者の眼差しの温かさを感じました。
ムーミントロールも根がとてもやさしい子なんですね。
冬で食べ物が無くなった集団がムーミントロールのジャム倉庫をめざしてやってくるということを聞いて、「ぼくのママのジャム倉庫を守るんだ」といっていましたが、結局、かわいそうに思って、家に招き入れてジャムを分けてあげます。最後には、大事にとっておいたイチゴジャムもあげてしまいます。
冬には冬の仲間がいて、けんかしたり仲良くなったり、助けたり助けられたりしながら、お日さまを待ちます。
暖かい春になったらどこかへ行ってしまう、冬のがんこでおこりっぽくてシャイですてきな仲間たちのムーミントロールの冬の話も悪くはないなと思いました。
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ムーミン全集[新版]5 ムーミン谷の冬 [ トーベ・ヤンソン ]
いつもありがとうございます。ムーミンの話を読むと、なんだかほっこりとします。雪と氷の冷たい冬の話でも。