好きになれない人に対しては
心の中で、その人の顔や姿を思い浮かべ
ただ、「有難うございます」と祈る
それだけで、「嫌悪感」は薄らいでいく
ー なぜ、そうした技法が、有効なのでしょうか?
「心身一如」だからです。
仏教用語に、「心身一如」という言葉がありますが、その意味は、人間の「心」と「身」は、別々のものではなく、本来、一つだということです。
従って、「心」が動けば「身」がついてくるのも真実ですが、逆に、「身」が動けば「心」がついてくるのも真実なのですね。 ー 本書より ー

人生で起こることすべて良きこと/田坂広志 著/PHP文庫
まず、著者の田坂広志氏の経歴を、少しご紹介しましよう。
東京大学卒。東京大学より工学博士(原子力工学)を授与。
米国シンクタンク客員研究員。米国国立研究所PNNL客員研究員。
日本総合研究所の設立に参画。現在、日本総合研究所フェロー。
多摩大学大学院教授に就任。現在、名誉教授。
…略…
4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議日本代表に就任。
東日本大震災と福島原発事故の発生に伴い内閣官房参与に就任。
……等々、
すばらしい経歴です! 順風満帆の人生のように見えるのですが、ご自身は逆境をこう語っておられます。
・物心ついた頃は、母が大病を患っていました。
・子供の頃、生家の事業が不況に陥ってから、貧しさの極みを体験しました。
・友達と遊んでいて大怪我をし、現在もその時の障害を持っています。
・小学校の頃は、転校が多かったため、友達も少なく、全く目立たず、勉強の出来ない生徒でした。
・大学受験当日の朝に、腎臓結石を発病し、七転八倒の中鎮痛剤を飲みながら試験を終え、その後2週間入院しました。
・大学では嵐のような学生運動を経験しました。
・研究者を目指しましたが、大学に職がなく、研究者の道を諦めて、民間企業に就職するという挫折を経験しました。
・その企業で務めていたとき大病を患い、医者からも見放され、生死の境を体験しました。
・言葉に尽くせぬ苦労をしてきた両親を、十分な親孝行をすることもできず、看取ることになりました。
なるほど、誰にでもご苦労はあるものですね。
医師からも見放される大病からご生還される人は、そうそういないものです。
このような逆境を歩んでこられた田坂氏は、そうした実体験から、つぎのように言われています。
人生において「逆境」に直面したとき
「人生で起こること、すべて良きこと」と思い定めると
必ず、道は拓ける
しかし、とてもそう思えない人のためには、
人生で起こること、すべてに深い意味がある
とも、言っています。
私も後者の部類ですかね、なかなかこう達観はできないものですよ。
そしてまた、田坂氏は「誰も大声では語らない人生の真実」について、きっぱりとこう語っています。それは・・・
人生において、「成功」は約束されていない
これには私は大声で、「そうですね!」と首肯します。
世の中には、「成功を心に強く描けば、必ず実現する」という成功法則を語る識者がたくさんいますし、そういう本も数多く目にします。
しかし、人生においては、誰もが、その人なりの精一杯の努力をしているにもかかわらず、ほんのわずかの偶然で、それらは手許から逃げていってしまうことがざらにあります。
なぜなら「勝者」の一方に、必ず「敗者」があり、「成功」の一方に、必ず、「失敗」があるからです。そして、勝者よりも敗者が、成功よりも失敗の方が圧倒的に多いのもまた現実です。
確かに成功法則は「温かい励まし」になりますが、上手くいかなかった場合には、
・自分は、頑張りが足りなかったのではないか。
・自分には、そもそもその能力が無いのではないか。
など、自分を苛めることになってしまいます。
そして、成功しなければ、自分には何の価値も無いのではないかという思いに陥ってしまいます。少なくとも私はそうでした。
諦めなければ、最後には成功するという識者もいますが、
それでは無限ループで、やがては疲れ果てて鬱になってしまう人も出てくるでしょう。
これに田坂氏は、もう1つ真実の言葉を言ってくれています。
しかし、人生において、「成長」は約束されている
人生において、何かの目標を持ち、その達成を目指して歩んだとき、どれほどの努力をしたとしても、その「成功」は約束されていません。
しかし、もし、本当に力を尽くして歩んだならば、何かの出来事によって、その目標が達成できなくとも、人生に「正対」する心の姿勢を失わないかぎり、我々は、必ず「成長」していけるのですね。
こうした真実を思うとき、私はやはり「人は成長するために生まれてきた」という小林正観さんや多くの賢者の言葉が、ふと脳裏をよぎります。
それは、どんな環境で、どんな人生を歩んだとしても、大いなる存在は、誰にでも成長できる機会を約束してくれていると思うことは、私たちに大いなる勇気を与えてくれます。
ただこれには、「人生に「正対」する心の姿勢を失わないかぎり」という但し書きがあります。
何が起こったか
それが、我々の人生を分けるのではない
起こったことを、どう「解釈」するか
それが、我々の人生を分ける
この解釈を間違わないためには、どうするのか?
人生に「正対」する心の姿勢とは?
人生のさまざまな局面での「こころの技法」とは?
また、不治の病で余命を宣告されてから、禅寺でつかんだ甦りの「死生観」とは?
など、田坂氏が体験をもとに、わかりやすく解説されています。
是非、一読をおすすめいたします。
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人生で起こること すべて良きこと 逆境を越える「こころの技法」 (PHP文庫) [ 田坂 広志 ]
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直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書) [ 田坂 広志 ]
いつもありがとうございます。今年の読書、1冊目です。今年はなるべくたくさんの本の感想を書きたいものですね。