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猫は、うれしかったことしか覚えていない/随筆/感想レビューなど

著者の家には、コウハイというオスの保護猫と、センパイといういうメスの老犬がいます。この本は、そのコウハイとセンパイの日常をつづったエッセイになります。

「猫は、うれしかったことしか覚えていない」という題には、「そんなことはない」反論してくる人も多くいると語っています。しかし……

 

コウハイは遊んでいた梅干しの種を誤って飲み込んでしまい、腸に詰まって開腹手術をしたのでした。無事退院となったときに、獣医師がこう言ったそうです。

「猫には、楽しい記憶だけが残ります。

コウハイちゃんには、梅干しの種を転がして遊んでおもしろかったな、という記憶だけが残り、苦しくなって手術して、入院までして大変だったということは、そのうち忘れます。だから、梅干しの種を見つけたら、” あ、あのおもしろいやつだ ”となって、同じことになりまねません。猫とはそういう動物なんですよ」

 

 幻冬舎

猫は、うれしかったことしか覚えていない/石黒由紀子 文・ミロコマチコ 絵

 

本当にそうなのかな。病院とか、お腹をこわした食べ物とか、イジメられた人とか、嫌なことも覚えているような気もするけれど。

うれしかったことしか覚えていないならいいな、という思いもります。もしそうだったら、ちょっとは別れの辛さから救われるような気がしないでもありません。

 

ほとんどの愛猫家の本は、重いの場面が書いてあって身につまされて辛くなってしまうので、あまり読む気が起こりません。

だけどこの本は、そういう場面がほとんどなく、友人と猫と犬とのたわいのない日常の思わずぷぷっとしてしまうようなことが、さらっと書いてあります。

「うんうん、わかるわかる」とか「そうだよなあ」、「ええっ、マジ?!」ということが短いエッセイで軽く書いてありますので、読むほうも軽く読むことができます。

そして、気持ちも軽くなるのです。

 

たとえば、こんなエピソード。

 

友人宅に、長年通ってくる猫がいました。その猫が、あるときから子猫を一匹連れてくるようになりました。ところがその子猫の目が、明らかに具合が悪そうな日がありました。

そこで友人は、動物病院に相談に行き、目薬をもらってきて、子猫に点眼してやりました。数日間点眼すると、子猫の目はみるみる良くなりました。

ひと安心していると、しばらくして知らない黒猫の親子も訪ねてくるようになりました。見ると、子猫の目の様子がおかしい。そこで友人は、またはりきって点眼。無理かと思った抱っこも難なくさせてくれて。

そして、またしばらくすると、目を患った子猫を連れた三毛猫が現れて・・・。

友人はこう言うのです。

「野良猫にはネットワークがあって、” 子猫の目がただれたら、あそこに連れていくと治してくれるよ ”って伝言が回っているんじゃないかと思うんだよね」

 

マジか。

そんな面白い話がたくさん詰まっています。作者はこう語っています。

 

何ごとにも好奇心を持って臨むこと、失敗しても「それはそれ」と先へ進むこと、正直で媚びず、いつも機嫌がいいこと。

夢と希望を持ち、それが叶わなかったら明るくあきらめること・・・。

これらはコウハイから学んだこと。

「過去にとらわれたり先々を思い悩むより、今をしっかり生きよう」、そう思うようになったのもコウハイの純粋さに憧れて。

 

日々の生活に疲れたり、辛くなったり、誰かの言動にイラっとしたり、ストレスがたまった人には、きっと本物の猫がそばに寄りそってくれているような、ひと時の安らぎをもたらしてくれる本になるでしょう。

 

 


猫は、うれしかったことしか覚えていない (幻冬舎文庫) [ 石黒 由紀子 ]

 

 

 

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