「あんた、逮捕されたんじゃなかったのか」
「されたよ。だけど釈放された」
「釈放・・・」
「前にいっただろ。自白は証拠の王様だって。その王様がいなきゃ、奴らはどうしようもないんだ」
言葉がでなかった。今回もまた黙秘を続け、処罰を免れたというのか。

沈黙のパレード/東野圭吾 作/文春文庫
静岡のゴミ屋敷の焼け跡から、母親の焼死体と3年前に東京で失踪した若い女性・並木佐織の遺体が見つかった。
佐織は父並木裕太郎が営む「なみきや」という料理店の看板娘で、歌が天才的に上手く、近々デビューをする矢先にいきなり失踪して行方知れずになっていた。
逮捕されたのは、23年前に少女殺害事件で草薙が逮捕し起訴した蓮沼寛一という男だった。状況証拠は間違いなく蓮沼が犯人と思われたが、蓮沼は完全否認しその後黙秘を続けた結果、「殺していない」可能性がわずかでもあれば殺人罪は成立しないということで無罪となったのだった。
今回の件も、蓮沼は佐織の失踪当時、佐織に付きまとっており、焼けたゴミ屋敷は蓮沼の老いた母親の持ち家で、佐織の遺体はその床下から発見されたのだ。蓮沼が犯人として逮捕されたのだが、黙秘を続けたことで再び証拠不十分で釈放されてしまった。
町のパレードの当日、その男蓮沼が殺された。
当初は死因が不明なため殺人かどうかもわからないとされていたが、刑事草薙の友人である天才物理学者であるガリレオこと”湯川”が、たまたまこの町にいて「なみきや」の常連になっていたこともあって真相究明に乗り出す。
「年に一度のパレードの最中、殺人容疑で処分保留中の人物が謎の死を遂げた。そして被害者の遺族たちには絵に描いたような鉄壁のアリバイがある。これを単なる偶然と片づけられるほど、僕は能天気な人間ではない」
そして湯川は、科学的な根拠から殺人と解明したのだった。
容疑者は、佐織の両親や恋人の高垣智也、彼女を歌手として教えてきた新倉夫妻、菊野商店街の人々や常連客など、佐織を愛したふつうの人々だった。
殺害方法は不明で、彼らは一様に「沈黙」する・・・
構造的には、アガサクリスティーの”オリエント急行殺人事件”を彷彿とさせます。憎むべき卑劣な犯人がいて、彼はずる賢く捕まらない。被害者を愛する人達が、犯人に天誅を下すという筋書きです。
この蓮沼という男は、幼女誘拐殺人と少女殺人、死体遺棄という卑劣な犯罪者です。今回も同じく、同情の余地のない憎むべき人間として書かれています。
そして、彼は殺されます。
しかしオリエント急行殺人事件より、殺害方法もトリックも、真犯人も、動機も、かなり複雑になっています。
殺害方法は作者の東野圭吾氏が理工系の出身なだけあって、かなり科学的な方法でありながら、それも2転します。当然ながらトリックもめまぐるしく変わっていきます。
蓮沼を殺害した犯人も意外な方向へいき、それに伴って動機も変わってくるという、なかなか最初から予測がつかない展開が用意されています。
「しかし、あなたが本当だと思っていることが、必ずしも真実だとはかぎらない。それを知らずして、運命の選択はあり得ない」
湯川は外した手袋をテーブルに置き、縁なし眼鏡の位置を指先で直してから留美を見つめてきた。
「真実をお話しします。僕が推理した真実です」
最後の最後まできて、またどんでん返しが用意されていました。
ただこのどんでん返しは東野圭吾氏らしい温かい血が通ったどんでん返しで、どこかオリエント急行殺人事件のラストを思わせるような一筋の光明が見えてうれしくなりました。
東野圭吾氏の作品にハマっている理由が、ミステリでありながら”読後感がいい”というところなのかなと思います。
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